AOPY の世界遺産訪問報告
                                                            クロアチア旅行記(5)
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リパの木の下で



  その後、僕達はザグレブ郊外の丘の上にあるレストランに行き、句会を催しました。このレストランは自然の中にあり、テラス席からはザグレブの街が一望できる素晴らしい場所でした。そのときの思いや風景などを詠みあって、各々の人のノートに書いていきました。英語で詠むとどうしても音節の問題がありますので、これがちょっと難しかったです。英語に比べてクロアチア語は日本語のように音節が比較的はっきりしていますので、俳句に適しているのではないでしょうか。俳句を詠む時、日本で必ずやることは、親指から折って行き、五七五を数える事です。これがクロアチアの人にとってはとても面白いしぐさに思えるそうで、みんなゲラゲラ笑っていました。え?こんな日常的なしぐさで笑いが取れるなんて・・・。僕が指を折りながら悪戦苦闘している様子を、ヴィシニア先生が詠まれました。
    under a lime tree
    
syllables in harmony
    from far-east country
             (リパの下 音節数える 日本人)  

ヴィシニア先生のご主人も参加されました。ご主人は英国人で元オックスフォード大学の教授で、ヴィシニア先生が留学されていた時に見初められご結婚されたそうです。どうりで、マクマスターという苗字はクロアチアにしては珍しいなあと思っていました。多分スコットランド系でしょうか?日本の大学で教鞭をとられたこともあります。民俗音楽を奏でるバンドが始まり、句会に華を添えてくださいました。とても楽しく素晴らしい時間が過ぎていきました。苦手な俳句もこんなに楽しく作ることが出来るんだなあとしみじみ思いました。あらためて日本の文化の素晴らしさを知り、自分も大切にしていかなければならないと思い、その事を教えていただいたヴィシニア先生に感謝しなければなりません。
    may this moment
   last forver and ever
   to a soft breeze

              (そよ風に 時よ止まれと 願い込め)

     from the very distant
   there arrives a stranger
   meets old friends

               (遠きより 見知らぬ人も 今は友)


ふと見上げると、僕達のテーブルの上には大きな木があり、とても涼しげでした。この木はなんていう木ですか?とヴィシニア先生のご主人にお聞きしたら、これだよといって、クロアチアの1リパ硬貨を取り出して見せました。リパはクロアチアの補助通貨で、100リパが1クーナです。その硬貨のウラには樹木のデザインがあり、リパという木でした。リパはクロアチア語でリンデンつまり、菩提樹のことです。ヨーロッパでは菩提樹は自由の象徴だそうです。あの悲惨な戦争を乗り越えて、クロアチアの人々は新しく作った彼ら自身の貨幣に、自由の象徴であるリパの木のデザインを採用したのでした。その通り、今ではこの美しい国の人々は自由と平和を謳歌しているのです。

すかさずヴィシニア先生が詠まれました。

     hot sun on Zagreb

    the shade of a linden tree

      comforts new friends
                (暑き日の リパの木陰に 友涼し)

                   ザグレブ郊外にて(2003年6月21日)



句会は美しい丘の上で行われました。


あの、で、ですから俳句はねえ・・・。」


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